SZ《Horizontal/Vertical》


<作品紹介>

《Horizontal/Vertical》は、世界の水平性と垂直性をモチーフとするメディアアートの実験的プロジェクトです。
鑑賞者は、自らの脳波の状態にもとづいて水平・垂直に反応する映像によって、脳と知覚世界のダイナミックな相互作用を体験します。姿勢、呼吸のリズム、眼球運動など、普段は無意識の身体的活動を自覚しコントロールすることによって、脳波の変化を促し、結果として知覚世界の変容を経験します。
《Horizontal/Vertical》は、人の身体的・心的状況と世界を知覚することが相互に関係し、互いに影響を与えあいながら刻々と変化する場です。鑑賞者はバイオ・フィードバック・システムにもとづく、日常の知覚とは異なる、新たな次元の知覚の生成に立ち会うことになるでしょう。


<作家紹介>

SZ

2007年、砥綿正之、森公一、真下武久、前田剛志によって結成されたアート・ユニット。
科学と芸術を横断し、メディアテクノロジーよって人間の可能性を拡張する方法を模索している。


<作品概要>

私たちの脳は無数の神経細胞によって構成され、それぞれの神経細胞は極めて複雑に関係しあっている。この神経細胞が、受容体である樹状突起において神経伝達物質を受け取り、それが微弱な電気に変換されることによって、電気信号による情報処理が行われるのである。脳波とは、そのような脳における電気的活動の全体を頭部の表面において測定できる電気の波(周波数)のことを示す。脳波には覚醒時や興奮した状況で検出されるβ(ベータ)波、睡眠へと至るまどろみの状況で検出されるθ(シータ)波、深い睡眠時に検出されるγ(ガンマ)波、覚醒しつつも落ち着いた状況において検出されるα(アルファ)波などがある。Horizontal/Verticalは、このような鑑賞者の脳波の状態を脳波測定装置によってリアルタイムに測定し、その測定の値に基づいて視聴覚環境に変化を与えることで、脳と知覚世界のダイナミックな相互作用を促そうとするものである。

作品の鑑賞者は、はじめにスツールに座り、脳波測定装置を頭部に装着する。その時点でのα波、β波、θ波を測定・解析し、それぞれの測定値を平均化した上で座標化を行う。鑑賞者の前の床面に投影された座標はこの脳波の状態をモニタリングしたものであり、Y軸のプラス方向はα波の量、マイナス方向はθ波の量を示している。またX軸のプラス方向は右脳のβ波の量、マイナス方向は左脳のβ波の量を示している。正面の壁に投影されている映像は、ハワイ・オワフ島の聖地をコンピュータ制御による雲台を用いて撮影したハイビジョン映像。および水平線・垂直線によって構成した抽象的な映像である。これらの映像がループ再生されている間に鑑賞者の脳の状態(座標化された脳波の位置)が解析され、上下左右のいずれかへとパノラマミックにパンニングするトリガーとなる。

鑑賞者は床面の座標によって示された自らの脳波の状態と壁面の映像との関係を確認することによって、身体的・心的状況と世界を知覚することが相互に関係し、影響を与えあうバイオ・フィードバック・システムとしての知覚環境に置かれるのである。やがて鑑賞者は、自らの姿勢、呼吸のリズム、開眼・閉眼など、普段は無意識の身体的活動を自覚しコントロールすることによって脳波の変化を促し、結果として知覚世界の変容を経験することになる。私たちの日常における知覚経験とは異なる、新たな次元の知覚生成の試みである。

展示風景Horizontal/Vertical - 展示風景はこちらよりご覧頂けます。