小出麻代 黙字 silent letters

小出麻代 黙字 silent letters

2020.11.21(sat) - 12.20(sun)

入場:500円

1drink付

※頂きました入場料の半額は作家へお渡しします

会場:千鳥文化ホール

大阪府大阪市住之江区北加賀屋5-2-28

展示概要

黙字とは綴りの中で発音されない文字、存在はするけど音を伴わない言葉のこと。小出は近年、様々な場所に赴き、場所そのものや、そこに関わりを持つ人とのやり取りを起点に「記憶」や「時間」にまつわるインスタレーション作品などを制作してきました。新型コロナウィルスの世界的流行による移動・接触制限の中で、これまでのようにどこかに赴き直接誰かに話を聞くこと、何かをみつけることから制作を進めていくことが困難となった小出は、他者の日常を想像し時間を共有する為の方法の一つとして、友人宛に手紙を書くことにします。それは小出が個人という単位の集積から「コロナ禍の日常」という広がった世界を想像し、聞こえない音を響かせる為のプロセスとして示されます。それらの試行から得たフィードバックを新たな起点とした新作インスタレーションとして展開致します。

「黙字」によせて

日々の急激な変化にまだ戸惑っていた頃、新学期が始まった。 これまではいつでも会うことができた同僚、一度も直接会ったことが ない学生。 それぞれと、画面を介してのぎこちない時間を過ごしていた時、 彼らと共に映る「風景」や「窓」に目が留まったことがあった。 整頓された部屋、散らかった部屋、パンパンに詰まった本棚、制作途中の作品、 時には家族の姿が画面に映ることもあった。 同時刻に、ひとつの窓では雨が降り、別の窓からは鳥の声が聞こえた。 画面越しに垣間見えるそういった風景を通して私は、 誰かと直接会って話をする時には、見ることも、 知ることもない「日常」について思いを巡らせた。 そして、様々な場所に住む友人達が、どんな風景と共に暮らし、 窓から何を見ているのか。これまで気にも留めていなかったことを 知りたいと思うようにもなった。 同時に、今、どのような毎日を過ごしているのか、ということも。 そう思う私も、家に居る長い時間の中で、窓に視線を向けることが多くなっていた。 どうしているのか、とメールで聞けば、その日のうちに返信があるのだろうし、 SNS を覗けば、もっとすぐ分かることもあるだろう。 けれど私は、友人達に手紙を書くことにした。 手紙が戻ってくるまでの時間、切手の消印、封筒のシワ、紙の手触り、文字の動き、 行間、書き損じの跡、同封された記録の断片、 そういったものが手紙に書かれた記憶と私を少し近づけてくれる気がした。 「黙字」は、単語や文を表す綴りの中で、表記されているにも関わらず、 読みあげられることのない文字のことを指す。 日々の暮らしの中で、発話され、語られ、共有されていくことの中に潜む無数の、 話す機会を持たれなかったこと、指し示されなかったことも「黙字」と言えるかもしれない。 手紙に書かれた日常をなぞり、「黙字」の音を想像するところから、はじめてみたい。

小出 麻代

小出 麻代

小出 麻代

1983年大阪府生まれ。2009年京都精華大学大学院芸術研究科博士前期課程版画分野修了。 近年は様々な場所に赴き、場所そのものや、そこに関わりを持つ人とのやり取りを起点に「記憶」や「時間」にまつわるインスタレーション作品などを制作している。主な個展に「形代ーかたしろ」(オーエヤマ・アートサイト、八木酒造/京都/2020)、「うつしがたり」(枚方市立御殿山生涯学習美術センター/大阪/2019)、「地に還るー地から足を離す」(Gallery PARC/京都/2018)、 グループ展に「生業・ふるまい・チューニング 小出麻代ー越野潤」(京都芸術センター/京都/2018)、「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ2015 枯木又プロジェクト」(旧中条小学校枯木又分校/新潟/2015)、アーティスト・イン・レジデンスに「END OF SUMMER 2018」(YaleUnion/ポートランド、アメリカ/2018)など。

《今日のこと、昨日のこと、明日のこと》 2019

《今日のこと、昨日のこと、明日のこと》 2019
写真:松見 拓也
写真提供:枚方市立御殿山生涯学習美術センター

《うつしがみ》 2019

《うつしがみ》 2019
写真:松見 拓也
写真提供:枚方市立御殿山生涯学習美術センター

《うつしがみー八木酒造》2020

《うつしがみー八木酒造》2020
写真:麥生田 兵吾

《むこう側から》 2018

《むこう側から》 2018
写真:表 恒匡
写真提供:京都芸術センター